公自転式撹拌脱泡装置 カクハンターとは?

材料の入った容器を公転させながら自転させることにより、大きな遠心力とせん断力で材料の撹拌脱泡を同時に行います。

カクハンターのメカニズム

カクハンターは粘度を問わず多種多様な材料の撹拌・脱泡に対応。
容器、装置共に密閉空間で作業を行うため異物混入の心配がなく、材料変更を伴う連続作業もスムーズです。
公転と自転の組み合わせが生み出す、せん断力と材料膜厚形成作用の破泡効果で、精密な撹拌・脱泡の同時処理を短時間で行うことができます。

撹拌作用:
自転に公転の遠心力をプラスすることで材料を容器の側壁に押し当て、自転作用により容器側壁と材料との間でせん断力を発生させて撹拌します。また、低粘度の材料は渦によっても撹拌されます。
脱泡作用:
公転の遠心力による脱泡および容器側壁と材料間での膜形成による破泡効果により脱泡します。
破泡しにくい材料は、無数の微細な泡に粉砕されますが、真空減圧を加えることによりごく微細な泡まで取り除くことが可能です。

カクハンターは様々な産業分野の業務シーンで活躍しています。

ご利用いただける分野、用途、材料

さまざまな産業分野において、用途を問わず、幅広い材料の撹拌脱泡にご利用いただけます

スマートフォンなどのIT機器、自動車や情報家電・生活家電など日常生活に使用される製品は、多くの高性能な電子部品に支えられています。この電子部品の製造に必須なのが、レアメタルなど高価な電子材料や磁性材料・機能性材料などです。また、太陽光パネルや二次電池・燃料電池にも、先端のエネルギー材料が不可欠です。
さらに、健康や美容に欠かせない医療品や化粧品などにも、さまざまな高付加価値材料が使用されています。

分野・材料

  • スマートフォン
  • 化粧品
  • 半導体
  • クリーム
  • 試験管
  • 試験管・ビーカー
  • 車
  • ソーラーパネル

公自転式カクハンターの特徴

カクハンターは粘度を問わず多種多様な材料の撹拌・脱泡に対応します。

容器、装置共に密閉空間で作業を行うため異物混入の心配がなく、材料変更を伴う連続作業もスムーズです。

公転と自転の組み合わせが生み出す、せん断力と材料膜厚形成作用の破泡効果で、

精密な撹拌・脱泡の同時処理を短時間で行うことができます。

  1. 1
    高速処理
    わずか数十秒~数分で、低粘度から高粘度まであらゆる材料の撹拌脱泡に対応します。
  2. 2
    個別設定
    ステップ運動
    公転と自転の回転数を個別に設定でき、さらにステップモードでの連続運転が可能です。
  3. 3
    最適設定
    材料の性質や種類に応じた細かな設定が可能で、幅広い材料の撹拌脱泡を実現します。
  1. 4
    温度上昇を抑制
    動作パターンの最適化により、撹拌による温度上昇を抑制できます。
  2. 5
    洗浄不要
    プロペラレスで装置本体の洗浄が不要で材料のロスがありません。
  3. 6
    簡単操作
    操作パネルの上下・左右キーだけで、簡単に動作設定ができます。
  4. 7
    真空減圧機能
    真空減圧機能でごく微細な泡も除去、真空ポンプを別置きとし真空ポンプの選択とメンテナンスの向上を図りました。

ユーザーの声

実際にカクハンターを導入した利用者の声を紹介しております。その他の事例については以下のリンクをご参照ください。

ユーザーの声 詳細はこちら

電子・情報・通信機器、セラミックス関連メーカー

高粘度スラリー(アルミナ粉末と熱可塑性樹脂)の撹拌・脱泡

セラミックスは、耐磨耗性、耐熱性、耐腐食性、生体親和性などに優れた素材で、台所用品のような身近なものから工業製品まで幅広く活用されています。しかしながら、非常に硬度が高く、ダイアモンド工具で削って加工する必要があり、作業工程も時間がかかります。その結果、セラミックス製品は高価になってしまいます。セラミックスパウダーと熱可塑性樹脂を混ぜて溶融させ、製品形状を模した型に流し込み成形を行うことができれば、ダイアモンド工具による加工も不要で、加工時間も短縮され比較的安価に作製できるようになります。ただしこの場合は、凝集物や偏析箇所が多いとひび割れの原因となります。つまり、セラミックスパウダーと樹脂をいかに均一に撹拌するかが重要となるわけです。

そこで我々は、数種類の撹拌・脱泡機の性能比較テストを行いました。その結果、撹拌と温度管理の観点で最も優れていた撹拌・脱泡機がカクハンターでした。一般的な装置は、公転自転回転比率が固定されているため公転設定しかできないのに対して、カクハンターは、公転と自転の回転を別々に設定できることが、最大の優位な点でした。

また、自転回転数のコントロールができない装置では、撹拌中に材料温度が上昇してしまい、容器の融解や材料の気化が生じて組成が変化し、品質維持に問題が起こる可能性があります。ある装置では、撹拌開始と真空装置の作動にタイムラグがあるため、成形時に割れの原因となる空気がスラリー内に取り込まれてしまうだけでなく、自転回転数をコントロールできないために温度が急激に上昇してしまい、作業を継続させることができませんでした。一方、カクハンターの場合は、撹拌開始と同時に真空装置が作動しますので、温度上昇を抑制しながら効果的な撹拌・脱泡が行え、我々の求める良好な高粘度スラリーを得ることができました。

製薬会社

活性反応試験(ハイスループット・スクリーニング)における
高密度マイクロプレートの撹拌・脱泡

創薬の世界では、良好な生理活性物質を早期に発見することが大変重要となります。そのためには、ターゲットとなる疾患に対して、1週間という短期間に数十万もの化合物を組み合わせて行う活性反応試験(ハイスループット・スクリーニング:HTS)の実施が欠かせません。

高い信頼性のHTSを実施するには、高精度の微量分注装置か、高速・高感度な測定機を駆使して、384や1536ウェル(穴)といった高密度マイクロプレートを用いて分析を行う必要があります。マイクロプレートが高密度化して、ウェル数が増え、ウェルがどんどん小さくなっていく状況に合わせて、それに対応するように分注装置や測定機も開発が進み、高密度マイクロプレートを用いたHTSの実施は容易にできるようになる、と思われていました。ですが、実際には多くの課題が生じたのです。中でも、各ウェル内の液体の撹拌と、試薬分注によるウェル内液中の気泡を除去することが、非常に困難でした。

自転公転式撹拌脱泡機を導入することで、従来のプレートミキサーやプレート遠心機では不十分だった高密度マイクロプレートの撹拌と脱泡が可能になりました。この課題解決によって、様々な試験を高密度マイクロプレート対応にすることができるようになり、精度よく迅速なHTSの実施に役立っています。

1536wellでのテスト結果

1536
撹拌前

HTS(ハイスループットスクリーニング)に用いる1536wellマイクロプレートへ2色の水性絵の具を分注しました。従来のプレートミキサーやプレート遠心機を用いてもこれらを撹拌することはできません。

1536
撹拌後

SK-MP12撹拌脱泡機を用いれば、粘度の高い絵の具のようなものでも撹拌可能であり、通常のアッセイであれば完璧な撹拌が可能です。
また、酵素、基質溶液や検出試薬の撹拌脱泡の他に、マイクロビーズ懸濁液の撹拌、培養細胞を用いたレポータージーンアッセイでの細胞の溶解及び撹拌をSK-MP12を用いて実施して効果を確認しています。

立命館大学
立命館大学理工学部 機械工学科教授・工学博士 大上 芳文 先生

産学連携による撹拌・脱泡性能の改良研究

立命館大学では産学連携による受託研究制度を実施しており、私はカクハンターを使用した流体と固体の材料の運動解析、および本装置の改良につながる提案という形で携わっています。研究分野はコンピュータによる流体運動の解析と工学的応用を図ることであり、本研究では材料の物性値に合わせてパラメーターを調節し、コンピュータを用いて流体力学上の運動方程式を解き、回転時に容器の内部で液体と固体の材料がどのような動きをしているかを解析しています。

撹拌開始直後数秒はダイナミックな変化が生じるため、重要なアクションプロセスとして特に集中的に解析を行っていますが、撹拌中は物性の異なる気体、液体、固体が干渉し合うためパラメーターも多く、数秒の現象であっても計算には膨大な時間がかかります。解析結果を元にした内部運動のシミュレーション動画作成も手がけています。

カクハンターは、公転に対する自転比率の設定範囲が広いという特徴が、さまざまな条件の撹拌・脱泡において有効であると理論的にも実験的にも実証できました。それらを元にさまざまな数値の自転公転比率や自転回転速度、公転軸に対する傾斜角、さらにさまざまな容器の形状を対象とした検証を繰り返し、より効率的・効果的な撹拌・脱泡を目指して協力しています。

岐阜大学

セラミックス懸濁液の調製

セラミックス製品は、高強度、高耐食性、耐摩耗性、耐熱性などの優れた性質を示すことから、多くの分野で利用されています。また、セラミックスは従来の構造材料だけでなく、強誘電体であるチタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの機能性セラミックス材料にも注目されています。

セラミックスの成形には、乾式成形法と湿式成形法があります。湿式成形法は、原料粉を溶媒中に分散させた懸濁液を調製して、その懸濁液を用いて種々の成形法を用いて成形体を作製します。

このセラミックスの懸濁液の調製に公転自転式撹拌脱泡装置カクハンターを利用して、従来行われているボールミリング法で半日以上かけて調製したものに匹敵する流動性の良好な濃厚懸濁液(濃厚な懸濁液をスラリー)を3分ほどの短時間で調製することができました。

公転自転式撹拌脱泡装置カクハンターの撹拌効果を検証
撹拌効果を検証するため公転速度を7に、自転速度を9に設定して、撹拌時間を変化させて濃度81wt%のジルコニアスラリーの粘度を測定した結果を上図に示します。撹拌時間が150~180秒でスラリーの粘度は低下し、良好な流動性を示すジルコニアスラリーを調製することができました。